弁護士の話

●アメリカの弁護士の話〜ジョークを生むほど身近〜

●児童虐待〜自覚しない親に問題〜

●損害賠償制度〜お尻のやけどが…〜


●アメリカの弁護士の話〜ジョークを生むほど身近〜

アメリカに今ジョークがあります。

天国の門前で、元アメリカ人弁護士が受付(?)から質問されています。「あなたは何歳で死んだのですか?」元弁護士が「60歳です。」と答えると、「そんなはずはない。記録によれば、あなたは101歳のはずだ。嘘をついた罰に、地獄へ行け!」

このジョークは、アメリカでの弁護士費用が一般にタイムチャージ制であることに関係しています。仕事をした時間数に応じて費用が計算されるシステムを悪用して、実際の時間よりも水増しして請求費を出していたので、その合計時間からすると、101歳になってるはずだというジョークなのです。

これ以外にもアメリカには、弁護士や法律制度を皮肉ったジョークが無数といって良いほどあります。訴訟社会であるアメリカ、そしてジョーク好きの国民性が関係しているのでしょう。それだけ、弁護士や法律制度が身近な存在でもあると言えるようです。

これに対して日本ではどうでしょうか?弁護士に関するジョークはあまり聞いたことがありません。弁護士事務所の敷居は高くて近づき難いという意識を持っている方が多いのではないのでしょうか?それは、我々弁護士にとってちょっと残念なことです。なんとか弁護士を市民の皆さんにとって身近に感じてもらえるよう、札幌弁護士会は、市民モニター制度や、裁判傍聴の機会を設けたり、シンポジウムを企画したりしています。

アメリカには、問い『100人の弁護士が乗った船が沈没した。その心は?』、答え『これで少しは世の中が良くなる』というジョークもあります。そんな風に言われることのないように、一人一人の弁護士は努力しています。

弁護士費用は弁護士会が基準を定めており、冒頭のジョークのような心配はありません。どんな問題でも、気軽に弁護士に相談していただきたいと思います。


●児童虐待〜自覚しない親に問題〜

小さな子供たちの痛ましい死を伝える新聞記事を目にすることが多くなった。その中には親からの虐待によるものも多い。

虐待の本質的な問題は、個別の虐待行為ではなく、日々、親の感情の起伏により虐待される子供の環境、それ自体にある。

時に溺愛され、時に虐待される環境にいる子供にとって、その瞬間瞬間の親の姿から自分の置かれた環境を察知し、それに対応していかなければならない環境自体が問題視されるべきである。

「不健康」「不適切」な養育環境に「健康的」「適切」に対応していこうとする子供たちの姿はあまりにも痛ましい。

一般に、虐待環境にある家族は社会との接触を持ちたがらず、孤立している。そのことが虐待の発覚を遅らせ、被害を大きくする。虐待している親は虐待していることを否定する。それは、親の子に対する躾である。「自分の子供を虐待する」などと、とんでもない繰り返しを主張する。

養育がうまくいかない、どうしていいのか分からないと煮詰まり、自分の行為を何かおかしいと認識して思い悩む親よりも、虐待していること自体を自覚しない親の問題は根深い。

私たちは、「虐待」とか「親権の濫用」という言葉に引きずられるのではなく、不適切な養育環境に置かれている子供たちと、もっとかかわっていく必要がある。「親権」は社会から干渉されないもの、親の子供に対する「権利」であるという固定概念を捨て、むしろ、親の子供に対する「義務」であることを問い直し、さまざまな理由で、その「義務」をうまく果たせない家族とかかわっていかなければならない。


●損害賠償制度〜お尻のやけどが…〜

ファーストフードのドライブスルーで買ったコーヒーでお尻を火傷したら賠償額が6400万円。ちなみに、この不運な?お尻の持ち主は79歳のおばあちゃん。

これは、数年前に実際にアメリカで起きた事件で、賠償額も裁判で決定されたものですが、日本の場合、お尻に火傷を負ったぐらいなら、賠償額がここまで高くなることはないでしょう。

このような違いは、損害賠償制度の違いに由来するものです。すなわち日本では、被害者が失ったものを金銭評価して賠償額を定める、つまり、現実に開いた穴を埋めるにとどまるに対して、アメリカではこれに加えて、加害者が事故防止策に怠ったことに非難を加えるという意味で、その社会的責任を金銭で償わせる制度(懲罰賠償)が用意されているのです。ですから、日本人のお尻はアメリカ人のお尻より価値がない、との「判ケツ」が下されたわけではありません。

ところで、日本でこのような事件が実際に起きたら、賠償額は一体どのくらいになるのでしょうか?おそらく、治療費実費と通院交通費、多少の慰謝料と通院日数分の休業損害、その他諸々を合計して、せいぜい数十万円といったところでしょう。

いや、その前に、ファーストフード店に損害賠償訴訟を提起しようとする人がいるかどうか。実は、先の被害者は、受け取ったコーヒーを太ももに挟んで蓋を開けようとしたところ、あやまって容器を倒したために、お尻に火傷を負ったのでした。日本なら「ちょっと損害賠償訴訟までは…」と思われる方も多いのではないのでしょうか?

アメリカでは、泥棒が侵入した家の中で怪我したときに、あろう事か、家の持ち主に損害賠償の訴訟を提起したとか。これが当たり前か、おかしなことなのかについて議論しているテレビ番組を見たことがあります。出演したアメリカ人弁護士は、当然賠償するべきだと主張し、日本人参加者は一様に驚いてしまいました。どうやら、日本では「自分の尻は自分で」ということの様です。


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